昔のようでいて電気やテレビも存在する、こことは違う時代。
料理の価値がより大きな位置を占める、こことは違う世界。
舞台はそこにある、とある料理大国「シナモン王国」です。

王都にある王立聖シモン料理学院は、過去に何人かの世界最高の料理師

――『大料理師』の称号の持ち主――

を輩出してきた名門校で、その教育はちょっとばかりスパルタン。
「基礎を十分にマスターしたら、あとはひたすら実践あるのみ」 といった教育方針にしたがって、
最高学年の2年生は学外の料理店での経営実習を行います。
そしてこの経営実習の始まりは、同時に卒業試験の始まりでもあるのです。

「フライング気味だけど、1年のときからバイトでそこそこ鍛えたし、
顔もまあまあ広めたし、物件の目星もつけたし……まあ、何とかなるだろう」

主人公ディルは、今年の秋からの新2年生。
成績優良であることを条件に学費を免除してもらっている彼にとって、
実習店の繁盛ぶりは死活問題。
そこで「下ごしらえは料理の基本」とばかりに、 入念な準備をしてきたのですが……

「へー、ベイリーフの分校に特別編入生が行くんですか ―って、俺!? 特別編入生って俺ですか!?」

いよいよ開店に向けて本格的に動き出そうとした矢先、同じくベイリーフへの 赴任が決まった
講師ラトーから知らされた、分校への編入。
これも因縁か、遥か遠くの港町ベイリーフはディルが生まれ育った故郷。
さすがに8年間も離れてしまっていては、 人脈も土地カンもあやしいところ……。

「拒否権がない以上、それでもやるしかないんだよなぁ。 『目指せ、大料理師!』……は無理にしても」

初めて訪れたかのような旧知の町で、 卒業を賭けたディルの挑戦が始まるのです!


 

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