保美の中から溢れる《力》が、どろりとした粘性を帯び、渦巻く
黒い霧となる。

【隻眼白髪の陰陽師】
「何っ!?」

【隻眼白髪の陰陽師】
「これは――この《力》は――っ!?」

【保美】
「くっ……うくっ……」

【梢子】
「保美っ!?」

 障気そのものである黒い《力》の塊は、自らを生んだ核である
保美を、蜷局(とぐろ)を巻いて包み込む。

【保美】
「大丈夫……いつもの立ち眩みみたいなものです」

【保美】
「大丈夫……苦しいのには慣れてるから……わたしだったら耐え
られる……」

 
 

【隻眼白髪の陰陽師】
「馬鹿な! これが《剣》と同じあの《力》なら、人間風情に
耐えられるはずがない!」

 保美は左右に首を振る。

【保美】
「耐えられなくてもいいんです。最初の呼び水さえ入れてしまえば、
後は――」

 摩多牟は周囲の《力》を貪欲に喰らい、ひとりでに大きくなる。
 そしてここは――

【保美】
「ここは根方の祭殿ですから」

【隻眼白髪の陰陽師】
「代々貯め込んできた《力》を吸いおったか――」

 そして十分な《力》を吸った保美の中に植えられた種は、獣の形
をした鬼として発芽しようとする。
 卯良島の昔話に語られる、天候さえも意のままにする、強大な
《力》を持った鬼王の呪いの化身としての形を成そうとする。
 隻眼白髪の陰陽師が使役する、巨大な鬼にも引けを取らない、



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