【梢子】
「ん……んんっ……」

 まぶたを開けると保美がいた。
 身体を透かした保美がいた。

【保美】
「梢子先輩、おはようございます」

【梢子】
「おはよう……今何時……?」

【保美】
「えっと……ごめんなさい」

 今の保美には身体がない。携帯電話で時刻を確認するにしても、
そのままではボタンひとつ押せないのでは難しいだろう。

【梢子】
「こっちこそごめん」

 時刻を確認しようとしたところ、生憎と電池が切れてしまっていた。

【梢子】
「先に起きてたなら、起こしてくれれば良かったのに」

 
 

【保美】
「先輩は疲れてたでしょうし、あまり早く起こしても、できること
なかったと思いましたし」

【梢子】
「それは、そうなんだけどね……」

 祠から出て、空の模様を確かめる。
 空はまだ赤みを帯びていないけれど、時刻は正午より夕方寄り
といったところか。

【梢子】
「嵐は一応、治まったみたいだけど……」

 風も止んでいる静かな大気は、不純物をすべて吹き飛ばしぴん
と張り詰めたような雰囲気がある。
 その静かさが重たいぐらいだ。

【保美】
「多分、これが『クロウサマがいらっしゃった』状態なんだと
思います」

【保美】
「昨夜の森もでしたけど、今は島中の《力》の濃度がすごいことに
なってます」


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