静かに眠る保美

 
 

 異様な冷気に凍りつき、深く静かに眠る少女たちの中、その
西洋人形めいた白く小さなかんばせは、本当に白く――人形の
ように見えた。
 人の形をしているが、人の魂魄を持たない器。

【梢子】
「あなた、保美なの――?」

【吸精鬼】
「――、――、――、――」

 少女の姿形をした吸精の鬼は答えない。
 私にはそれが本当に保美であるかどうかを確認する術(すべ)
がない。
 これが保美の無意識ならば、私が知っている保美の意識は、
自分が何をしているのかも知らず、深くに沈んでいるのだろう。

【汀】
「さて」

 汀は朱塗りの棍の真ん中あたりを握った手を、端の方へとず
らして行く。
 杖を持つように棍の片端を握りしめ、両手をわずかにひねる
と、拳の握りは緩めぬまま――
 手と手の間を離していく。


次へ
 
 

1
 
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 |