朝食風景

 
 

【百子】
「お米、わかめ、大豆、ほうれん草、梅干し――」

 目をギラギラと光らせた百子が、並べられた朝食に視線を走
らせ、逐一その献立内容をチェックしていく。
 端から端へとまず一巡。
 返す刀でもうひと舐め。
 さらには安全な横断歩道の渡り方よろしく、もう一度反対側
まで眼をひらめかせ、見落としがないことを確認して――

【百子】
「ざわっち、ざわっち、動物性タンパク質はどこですか……?」

 食肉に飢えた獣の瞳が、それもまた動物性タンパク質には違
いない、ほっそりとした柔肉へと向けられる。
 憐れなるかな、犠牲の羊。
 物理的な圧力さえも伴いそうな、熱のこもった視線に押され
た保美は、じわりじわりと後退していくものの――
 その距離以上に百子の方が、にじりにじりと近寄る幅が大き
く、ふたりの距離は詰まっていく一方だった。

【百子】
「昨夜一食は我慢しましょう! 肉を消化吸収できない腸など
断ってしまう心持ちで、できぬ我慢をいたしましょう!」



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