アカイイト TOPページ >> Webノベル「アカイイト」
 
 
 
た。
 小走りに回り込むと予感的中。手中にあるのは大きなレンズの付いた愛用のカメラ。最近のデジカメはすごいらしいけど、拘りがあるのか愛着があるのかサクヤさんはフィルム式一本槍だ。
「え? まさか撮ったの? 寝てるところ撮ったの?」
 プロがプロ仕様の機材を使って撮る写真はとても綺麗だから、写されるのは別に嫌じゃないんだけど、まさか乙女の寝顔を無断で撮るなんて。
「サークーヤーさーん?」
 寝起きのせいか未だとろんと蕩け気味の眦に力を入れて睨むと、サクヤさんはそっぽを向いて口笛を吹いた。夜の口笛を吹くのは、ちょっと――じゃなくて。
「フィルム没収!」
「それは承服できませんわ。今日は他にもたくさん撮っていただきましたもの」
「そうそう。はとちゃんは、あたしらの青春メモリアルまで一緒に奪っていっちゃうつもりなわけ?」
「ううっ、それは、その……」
「申し訳ありませんが、泣き寝入りしてくださいませ」
「またそれなの!? わたしいつも泣き寝入りなの!?」
「そのようですわ」
 いけしゃあしゃあと嫣然と、わたしから二の句を奪うお凛さん。
 陽子ちゃんに至っては、そんなフォローさえする気がないのか、
「あ、ところでですね、サクヤさん。焼き増し分なんですけど、はとちゃん経由だと中身抜かれる怖れがあるんで、あたしんち直で送って

 
 
もらうってことでいいですか?」
「構わないよ。住所は後でメールしてくれればいいから」
 なんてサクヤさんと話しており――
 春の刹那を体現する、花びらがひらひらと舞う、卯月は半ばの全休日。
 そんな散り行く桜を惜しむ、宴に遊んだ日の午後のこと。
 カメラのフィルムが一年の、一片の絵を切り取ったこと。
《   了   》
 

9
 
 
 
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |

※本文中に記載されている商品名等は、各社の商標または登録商標です。
※当ホームページ内で使用している画像・音声等の二次使用権はWellMADEと(株)サクセスに帰属します。
転用・販売・領布するなど無断で使用することを固く禁止致します。

Copyright (C) WellMADE , (C) SUCCESS Corporation All Rights Reserved. No content on this web site including literary work,graphics,
images,music and other production maybe reproduced in any form without express written permission of the authors.