アカイイト TOPページ >> Webノベル「アカイイト」
 
 
 

ひ と と せ の ひ と ひ ら ・ 如 月
 
麓川 智之
 
 

 夏が終わり、秋が去って、しんと冷え込む冬が来た。
 未だその冬の最中なのだけれど、暦の上ではすでに春。まさに光陰矢の如し。
 迎えたばかりに思える新たな年も、いつの間にやら十二分の一と少しが過ぎ去った二月、如月。更衣とも書くそうだけれど、この「更」は衣更えの更なのだろうか、更に衣を重ねるの更なのだろうか。
 かく言うわたし羽藤桂は、備えあれば憂いなしの座右の銘に恥じぬセーターを着込んだ制服の上にダッフルコートとマフラーという完全防備のいでたちで、後者の更衣だったりする。それはもう、お母さんゆずりのプロポーションの「プ」の字もないぐらいに着膨れしていて――
 ごめんなさい、嘘つきました。
 もともと人様に自慢できるほどのものじゃないです、はい。
 しかも今はダッフルコートの色形ともあいまって、陽子ちゃんにはペンギンのようだと揶揄されたりするていたらく。
 ううっ、これでも脱げば陽子ちゃんよりは凹凸あったりするのに
――そりゃあ、お凛さんには全然敵わないけれど、食生活の差かしらん。
 白くまあるく吐かれた息が、寒空の中に散っていく。
「……で?」
 隣を歩いていた陽子ちゃんにせっつかれて、わたしははっと我に返る。いけない、いけない、いつもの悪い癖が出た。わたしはふっと思い浮かんだ考えに心を向けると、周りのことが判らなくなる性質なのだ。



 

1
 
 
 
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 |

※本文中に記載されている商品名等は、各社の商標または登録商標です。
※当ホームページ内で使用している画像・音声等の二次使用権はWellMADEと(株)サクセスに帰属します。
転用・販売・領布するなど無断で使用することを固く禁止致します。

Copyright (C) WellMADE , (C) SUCCESS Corporation All Rights Reserved. No content on this web site including literary work,graphics,
images,music and other production maybe reproduced in any form without express written permission of the authors.