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「…………」
 それで納得したのか、それとも何を言ってもオハシラサマの覚悟が揺るがないことを知ったのか、サクヤさんも押し黙っていた。
「でも葛ちゃん。こんなことをしなくても、主を別の安全なものに変えたりはできないの?」
「桂おねーさんは粘土で人形を作れますか?」
「上手いかどうかはともかく、できるよ」
「では、石ではどーでしょう?」
「最初から人の形に似てる石なら。顔を描いたりして……」
 わたしはようやく葛ちゃんが言いたいことを理解する。
「解っていただいたようですね。変造術も似たようなものなんですよ。変える対象によって必要になる力もかなり変わってくるわけです。それでですね、その……」
 葛ちゃんがご神木に向かって視線を泳がせる。
「今のわたしの力では……」
 主を封じているほどのものなのだから、きっとかなりの大物なのだろう。それに代わる力を葛ちゃんに与えるには、あれしかない。
「うん、わかってるよ」
 オハシラサマの覚悟が変わらないなら、わたしにできるのはそれが無駄にならないように手助けするだけだ。だから、わたしは地面に膝をつき、葛ちゃんが血を吸いやすいように身長差を埋めた。
「では桂おねーさん、いただきます」
「うん……どうぞ」
 わたしの首に腕を回して、葛ちゃんが遠慮がちに顔を寄せてくる。わたしは顎をもたげ、肌の柔らかい場所を葛ちゃんに示した。
 
 
「はぅ……」
 葛ちゃんの口から漏れる息が首筋の肌を湿らせ、どの辺りに噛みつくのかを事前に予告してくる。既に一度血を吸われているとは言え、心臓の鼓動が速くなり、背筋がぞくっとした。
「あ……むっ」
 牙の先端が肌に触れ、ちくりとする痛みに続いて、一気に牙が肉の奥深くに挿入された。
「くっ!!」
 肉を抉る牙に身を固くして痛みを訴えると、かなり大げさな動きで葛ちゃんが後ろに引き下がった。
「うわわっ、ごめんなさいですっ!」
 いつの間にか生えてピンと上を向いていた筈の狐耳が、しゅんと垂れ下がっているのが何だか可愛くて、わたしは痛みを忘れて笑ってしまう。
「あはは、別にいいんだよ。ちょっとぐらい痛いのは、最初からわかってたことだもん」
 離れた葛ちゃんに抱きついて、頭を抱え込んで唇を首筋に導きながら告げる。
「だけど葛ちゃん」
「ななっ、何でしょーか!?」
「葛ちゃんのその格好って、犬歯尖って牙になってて、血を吸うのに向いてるよね」
「たはは。これは単に尾花譲りのデフォルトでして、別にそーゆー他意は…うひゃっ」
 今度は葛ちゃんの身体がびくっと跳ねて強張った。


 

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