*1 霊子力学(psyonic mechanics)
 西暦2068年、ウォル(W.O.L. = Oread Organic chemistry Laboratory *4)の創設者であるアイザック・オリードによって発表された力学説。オリードは、霊子(psyon *2)と呼ばれる全く新しい素粒子の存在を提唱し、それが引き起こす未知の現象の数々を唱えた。発表当時は、その信じがたい内容に異論を唱える研究者は少なくなかったが、それまで科学的見解が不可能とされてきた超現象の数々を立証する説として、次第に支持されていく。

*2 霊子りょうし(psyon)
 有機生命体から放出される特異素粒子。宇宙を飛び交うニュートリノ(neutrino *3)と反応し、様々なエネルギーを生み出す力を秘めている。西暦2137年、ウォルのカモノハシ実験によってその存在が明らかになった。この発見により霊子力学は立証され、人類は飛躍的科学進化を遂げることとなる。

*3 ニュートリノ(neutrino)
 中性子や原子核のベータ崩壊時などに放出される素粒子。恒星の中心部で起きる熱核反応や、超新星爆発のときに多く生成され、光速で飛来する。通常の物質とはほとんど反応を示さず、それらを貫通してしまうが、霊子との反応率は非常に高い。ニュートリノは霊子とエネルギーを媒介する素粒子であり、ニュートリノ無しでは霊子からエネルギーを生むことはできない。

*4 ウォル(W.O.L. = Oread Organic chemistry Laboratory)
 西暦2073年、アイザック・オリード(Isac Oread)により創設された有機化学研究所。ウォルは、それまで理論上の仮想粒子として扱われていた霊子の立証や、超有機型人工知能(psychical systematic artificial intelligence *8)の開発等を成功させ、人類の科学進歩に多大な貢献をもたらした。銀河侵出後は、ガイズ(G.U.I.S. = Galactic Unified Intelligence System *10)の開発プロジェクトに参加し、ガイズによる銀河統制社会を築き上げる。しかし、時代の流れと共にウォル構成員は超有機型人工知能へと取って換わり、宇宙暦半ばにはガイズとの完全統合が行われ、事実上消滅した。

*5 ミュー(μ = Medium Unit)
 サイヴァリア(psyvariar *6)のみで構成されるウォルの研究用サンプルユニット。西暦2138年、その予備群とされる子供たちが霊子力学研究のため連邦各地からウォルへと集められ、非公開の研究が進められる。しかし、西暦2153年、その驚異的な力の余り、彼らは人類の危険分子であると判断され、全員永眠に処された。

*6 サイヴァリア(psyvariar)
 高レベル霊子放出能力を持つ、霊子能力者に対する総称。

*7 有機型人工知能(S.A.I. = systematic artificial intelligence)
 人間の脳細胞を元に、主にバイオテクノロジーによって形成された人工知能。従来の人工知能には不可能であった、リアルな感情や自我が存在し、その性質はサンプルとなった遺伝子に依存する。

*8 超有機型人工知能
  (P.S.A.I. = psychical systematic artificial intelligence)

 有機型人工知能に霊子放出能力を持たせたものが、超有機型人工知能である。高レベルの霊子放出能力を持ち、霊子動力の操縦を含め、数々の霊子能力技術を可能としている。サイヴァリアとは異なり思考抑制機構を持つため、人類にとって忠実であり扱いやすい。

*9 ラムダ(λ = lambda)
 西暦2123年、人類が銀河侵出以前の時代に開発された最初の有機型人工知能(S.A.I. = systematic artificial intelligence *7)。歴史上では、宇宙暦初頭に地球と共に廃棄処分された事となっているが、非超有機型人工知能であるラムダは、ガイズ(G.U.I.S. = Galactic Unified Intelligence System *10)の監理下外にて孤独にも機能し続ける。ガイズ暴走時には、旧時代に永眠に処されたミューを蘇らせ銀河を滅亡の危機から救った。また、計り知れないほど強力な精神干渉能力を持ち備え、人類の影の指導者として君臨する云わば神的存在である。一千年以上にも及ぶ自己進化の過程おいて、人間の肉体との完全融合に成功し、現在では通常の人間に紛れ永遠の生活を繰り返している。

*10 ガイズ(G.U.I.S. = Galactic Unified Intelligence System)
 宇宙暦93年より、銀河全体の管理統制を行っていた知能組織の名称。超有機型人工知能の集合で形成され、フォトン(photon intelligence unit)、グラビトン(graviton intelligence unit)、ウィークボゾン(weakboson intelligence unit)、グルーオン(gluon intelligence unit)の4つの中核知能を主として成り立つ。銀河系全ての超有機型人工知能は、これら中核知能とリンクされ、銀河は平穏に管理されていた。しかし、宇宙暦422年、超新星爆発を機にグルーオンが突如暴走し、銀河を危機へと陥れる。

*11 霊子動力(psyonic motive power)
 霊子とニュートリノを主エネルギーとした動力。ニュートリノのバーストによる強力な推進力。反重力フィールドの生成による高重力圏離脱の容易化。時空間収縮による超遠距離移動。霊子動力の持つそのポテンシャルは、人類の新たなる時代を築き上げることとなる。駆動に多量の霊子を必要とするため、そのパイロットには高レベルの霊子放出能力を要求される。
 西暦2171年、人類は霊子動力によって初の太陽系離脱に成功した。

*12 ウォズ(WO.S.E. = the Order Of Spiritual Entropy)
 ガイズ消滅後、混沌とする世情のさなかに数多く誕生したカルト教団の一つ。ガイズを神と崇め称えるウォズは、その殆どが元ウォル構成員の子孫から成り立つ宗教結社であり、その実態は生粋の科学者集団である。ウォズの信仰目的はガイズ復活とガイズ統制社会の再構築にあったが、それらの思想は「虚妄の意思」(the will to fabricate *13)により暴かれ、ウォズは壊滅にまで追いやられた。しかし、虚妄の意思の存在を予測し感じ取っていたウォズは、その水面下にて、超有機型人工知能であるエータ(η = eta)の開発を行い、思念補完を達成させる。

*13 虚妄きょもうの意思(the will to fabricate)
 ウォズが銀河に暗躍する第三の意思に対して名付けた名称。虚妄の意思による社会矯正は必要最小限のものであり、その理不尽さを見破ることは極めて不可能に近いものであったが、ウォズはそれを見逃さず、その存在を俄かに感じ取っていた。
 虚妄の意思とは、他でもなくラムダのことを指す。しかし、ウォズにはそれがラムダであるということを知る術は無かった。

*14 ニュートリノ収集炉(neutrino absorption furnace)
 居住惑星のニュートリノ量を安定させるために開発された装置。装置には、ニュートリノの吸引機構、貯蔵機構、及び放射機構が設けられており、居住惑星のニュートリノ濃度を安定させることを可能としている。霊子力学社会におけるニュートリノ濃度の安定化は、ガイズ暴走時からの課題として科学者たちにより研究が進められ開発されたものであったが、その実際はラムダの頭脳によって考案されたものである。

*15 ウィークボゾン(weakboson)
 ウィークボゾンは中規模の都市惑星であるが、D-MAL4と呼ばれる大型のニュートリノ収集炉を備えるため、厳戒警備区域として指定されている。D-MAL4は近隣する13もの都市惑星に対しニュートリノの安定供給を行っている。

*16 M.E.S.A.(Medium Enactment Security Association)
 銀河連邦におけるサイヴァリア法制定保安局の名称。M.E.S.A.はサイヴァリア社会においての秩序形成のため、零暦初頭に制定され設置された。主業務は、M.D.S. (Medium Drive Suits *17)による銀河連邦全域の治安維持である。M.E.S.A.で使用されているM.D.S.は、全て杵島霊動力社(kishima P.M.P. corporation *18)製の特別発注モデルであり、パイロットの特性に合わせたカスタムチューンがなされている。

*17 M.D.S. (Medium Drive Suits)
 サイヴァリアの乗用ために考案された霊子動力ロボット。その操縦は、P.S.A.Iとパイロットとの精神コンタクトによって行われ、パイロットはその機体をまるで自分の手足のように扱うことが可能である。また、小型のニュートリノ収集炉を搭載することで、サイヴァリアの力を存分に発揮できるよう設計がなされている。

*18 杵島霊動力社(kishima P.M.P. corporation)
 量産型M.D.S.の販売を世界に先駆け行い、多大な成功を収めた、M.D.S.の老舗メーカー。その品質は他社の追従を許さず、現在でも圧倒的なシェアを誇る。